素敵なひととき

盛りだくさんの月極

1990年から始まったわが国のバブル経済の崩壊過程は、90年代後半になるとますます混迷の度合を深めていった。 株価は98年いっぱい下落基調が続き、同年10月には日経平均は1万2、880円、単純平均株価は481円と、バブル崩壊後の最低を記録した。

EPSは98年には5、1円と東証がデータを公表し始めた71年以降では最低の水準になり、JOEも1、1%に落ち込んだ。 こうした中で98年には株価も90年代の安値を更新したが1部上場企業の平均PE「は103倍と、異常な高水準に達した。
そして、事実上のゼロ金利の定着にもかかわらず、経済は実質ゼロ成長の状態が続いた。 その半面、バブルの恩恵もあって国民金融資産残高は90年代に入ってからも着実に増加し、2000年には名目GDPの2、8倍の1、400兆円に達した。
これを受けて、1998年には「フリー」、「フェア」、「グローパル」をモットーに、いわゆる金融ビッグパンが実施された。 また、98年に成立した金融再生法のもとで、一部の大銀行の固有化、残りのほとんどの大銀行に対する巨額の公的資金導入という、時代に逆行するような非常措置によって、戦後日本の経済発展を支えた間接金融制度は劇的な終鷲を迎えた。
わが国は新しいミレニアムを目前にして、ょうやく成熟した先進市場経済にふさわしい、オープンマーケットを通じた純投資と直接金融制度にもとづく株式市場の入り口にさしかかったのである。 その一環として、わが国の企業も収益性を犠牲にして規模成長を重視した人本主義的経営を卒業して、ょうやく資本主義経済における株式公開会社の原理原則である、株主価値重視の経営にめざめ始めた。
JOEや株価の重視がはじめて多くの大企業の経営者の口にのぼり、人員削減をともなう本格的なリストラや事業の整理統合、既存のグループや系列を越えた内外大企業聞の合併や戦略的提携などが、次々に発表され始めた。 これにともなって株式相互保有制度の本格的な解きほぐしが始まった。

また、時価・連結経営への移行、キャッシュフロー重視が叫ばれ、持株会社方式の導入やストックオプション制度を採用する企業も増えた。 さながらアメリカの1930年代の「体制変革」のプレイパックをみる思いである。
時価評価への動きと並行して、JOE重視に始まり、会計指標ではなくキャッシュフロー・ベースの新しい評価尺度が次々に登場してきた。 そしてこれらの新しい評価尺度にもとづいて選ばれた、一握りの優良金業が脚光を浴びた。
1990年代後半の株価評価上の最大の特色は、大半の企業の株価が低迷するなかで、新しい尺度で評価された一部の企業群の株価が著しく高く評価されたことである。 とりわけ99年の株式相場の久々の上昇局面では、これらの優良銘柄群が主役を演じた。
図246は日経平均の構成銘柄の中で、どの時期に株価がピークをつけたかを示している。 このうち194銘柄は8690年にピークをつけたのに対し、S、富士通、武田薬品工業をはじめとする20銘柄は、9699年にピークをつけたか高値を更新した。
このような株価評価の多様化の動きを反映して、付属資料4に示されるPE「の分布状況をみると、平均帯は1980年代半ばの水準に低下するなかで、ゼロ(赤字企業)から100倍を超えるものまで非常な広がりをみせるようになった。 2000年に入って小泉内閣の手で、ょうやく銀行の不良債権の本格的な処理が始まり、2002年には金融再生のための制度的枠組みが整った。
しかし、この過程でいわゆる銀行の貸し渋り、貸しはがしが生じ、経済はいっそうデフレ色を強めた。 これにともなってゼネコンや流通業界大手で経営破綻をきたすところが続出し、中小企業の倒産件数もかつてない高水準に達した。
2002年3月期には、東証1部上場企業全体の利益の合計がマイナスになるという異常事態になった。 さらに、銀行再生の一環として株式の相E保有の本格的な解消が進んだため、需給面でも大きな圧迫要因となった。
このため株式相場は2000年初めをピークに下げ続け、2003年春には日経225平均で8、000円を割り込むところまで落ち込んだ一方で、東証1部上場銘柄の平均配当利回りは最近では1、3%台に乗せて、長期金利を大きく上回る状態が定着している。 また平均株価純資産倍率(PBR)も1、3倍に低下している。
それにもかかわらず株価はバブル崩壊後の最安値圏で低迷しており、それが銀行や企業の保有株式の評価損の増大をもたらすという悪循環が続いている。 こうした中で、第21章で取り上げたように、多くの業種にわたる大企業で本格的な事業および財務のリストラクチャリングが始まっている。
そして、最近の顕著な現象として、いわゆる大企業の中でいち早く株主価値創造経営に脱度したところと、まだ構造改革途上のところにはっきり二分されていることがあげられ経済的利益NOPAT(税引後営業利益)資本費用、資本費用簿価投下資本X加重平均資本コスト、税率は実効税率、リスクフリー金利は日経公社債インデックス利回り、株式市場リスクプレミアムは4%、sは日経ポートフォリオ・7スターの対東証1部7アンダメンタル・ベータ値を使用。 表246は公開会社3、164杜を対象に、日経Quick情報が試算した経済的利益にもとづいて、直近決算期に関してベスト10、ワースト10企業をリストアップしたものである。
この表の経済的利益が大幅にマイナスになっているグループのリストラクチャリングが完了するまでは、本格的な株式相場の上昇は期待できないと考えられる。 このように白本経済および日本企業再生に向けたプラス材料とマイナス材料が交叉するなかで、産業界全体としてはファンダメンタルな収益力が着実に改善していることが将来に希望を抱かせる。

の、過去10年間の1社当たり平均経済的利益の推移を示したものである。 リスクフリー金利の持続的な低下によって、ベースとなる平均資本費用が減少していることによる面が大きいとはいえ、わが国上場企業の平均経済的利益は着実にマイナス幅を縮小し、2002年一2003年3月期にはほぼブレイク・イーブンのところまできている。
表247は、図248と同じ対象銘柄の平均経済的利益の推移と、利益がプラスの企業について市場付加価値との関連性の推移をみたものである。 これからわかるように、わが国でも現在では株価評価(市場付加価値)が、経済的利益で示されるファンダメンタルな収益額と強い正の関係を示すようになってきていることがうかがえる。
また、経済的利益がプラスの企業数も着実に増えている。 図249は、2002年3月期決算にもとづいて推計した経済的利益の上位50銘柄、下位50銘柄を、2002年7月初めの株価で時価加重して機械的につくったポートフォリオを、2003年5月まで約10カ月運用した時のパフォーマンスを示している。
市場平均が19、3%下落するなかで、上位50銘柄ポートフオリオの下落率は12、9%と市場平均を6%以上上回り、下位50銘柄ポートフォリオを15%も上回っている。


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